第15回 マッチレースの練習方法(2)
 海上練習いろいろ

Posted by mantaro on 2011年11月27日 under 未分類 | Comments are off for this article

私が所属する紀州ヨット少年団は、伊勢奥志摩の五ヶ所湾という所で活動しています。
ここの志摩ヨットハーバーには、マッチレースで使えるJ/24が6艇レンタルできる状態にあり、
目の前には美しい海があり、美味しい魚がいます。
 そんな我々の練習に、時々、初めてマッチレースを経験するという選手がやって来ます。
彼らの多くはディンギー出身で、ジュニアや学連から鍛え上げられていて、フリートレースでは
素晴らしい成績を残してきた優秀な選手であるものです。

そんな彼らが初めてマッチレースをやると、必ず戸惑うことが3つ、ないし4つあります。
 A)スタートマニューバ(4分間何をやってよいか解らない)
 B)逆回りのマーク回航(クロック回航で、クルーワークもルールも微妙に違う)
 C)キールボートの操船(ウィンチの巻き方、艤装、スピンの揚げ降ろし)

オリンピックキャンペーンをやっていたような優秀な有名選手が、我々の練習にやってきて、ウィンチを
逆巻にして慌てている姿を見るなんてのは、我々の密かな楽しみでして、実に愉快なものです。。。
まぁ我々の楽しみは別にして、、上の3点が必ず戸惑うモノならば、逆に言えば、
マッチレースの大会に出る前に、必ず練習しておかなければならないポイントだという事なんですね。
 
 
海上練習いろいろ

 1)スタート練習:5分前で時計を合わせ、エントリー~スタートまで。
 2)レース形式 :スタート練習の延長で、そのまま上マークに向かう。
 3)クルー練習 :短い距離で上下のマーク設定し、連続で何度も回航。
 4)ケース設定 :タッキングマッチ、マークルーム、ペナルティ解消、など特定の場面を設定。


 
1)スタート練習のポイント
 a)ダイヤルアップ:「ジャストエントリー」「Stop, Backing & Go」の操船技術の習得
 b)ミラーリング :「スターボ固め」「上下固め」の攻め方・位置取りの理解
 c)ウェービング :「Time & Distance」「LeadBack or TailBack」「Hook」の判断、精度向上

 スタートまでの一連の流れで、上のa,b,cの場面が順に発生します。
 それぞれ、どの精度を高めるのか、意識を持って取り組むことが重要です。
 できれば本ページ左下の「マッチレーストレーニング」テキストを読んでから実践練習を。
 
2)レース形式のポイント
 a)1周で流し込みフィニッシュ、下マーク回航まで、2周、などパターンがある。
 b)少し距離が離れたら、先行艇がペナルティターンをして、再度接近戦にする。
 c)スタート時点から決定的に負けてたら「参った!もう1回」
 d)できれば、ペナルティフラッグ(Y旗)を用意して、実際に挙げて抗議する練習も。

 選手は、「とにかく勝ちたい」気持ちが強いもの。だから、大きなリードを欲しがります。
でも練習では接近戦の制し方を学ぶことです。
 「レースでは、100メートル勝っても1点。1ミリ勝っても1点。確実に1点が取れる選択を。
  練習では、100メートル勝ったら練習になっていない。。。」
 
3)クルー練習マーク練習のポイント
 a)必ず、上下マークを打つ。「あと○艇身で仮想マーク」なんて練習は意味がない。
 b)疲れるし人気のない練習なので、1艇しか用意できない時などに集中的に行います。
 c)でも、大会前には、やっておくとクルーワークに自信が持て、心の余裕に繋がります。

 ディンギーの選手なら、キールボートに慣れることは、一度は取り組む必要があります。
 ・バウマンはスピンのアップダウンを。
 ・トリマーはウィンチとシートの取り回しを。
 ・スキッパーはキールボートを加速させる感覚を。
 
4)ケース設定練習のポイント
 a)殆どやらないし、練習すること自体に技術が要る、高度な特訓です。
 b)やるなら、「上マークの右取り合戦」がお勧め。逆転が起きる典型的なパターンです。
 c)次がペナルティ。上マークをテールtoノーズで廻り、先行艇がフィニッシュまでに解消を狙う。
 初めてマッチレースをやるという段階なら必要ないと思います。
 全日本を狙うレベルなら、必須の練習です。どのチームもあまりやってませんが。。。


 
 
ゲームとしての駈け引き

 マッチレースやチームレースはセーリング競技の中でも、ゲームとしての特徴をもつ種目です。
これまで、コンマ1ノットにしのぎを削るような、ストイックな厳しい練習ばかりを行い、
その戦いを勝ち上がってきたような優秀選手にとっては、このゲームとしてのヨットというのが、
新鮮なモノとして感じられるようです。

なので、初めてマッチを経験する選手が必ず戸惑う4つ目は、「ゲームとしての楽しさ」なんです。

インカレや国体、オリンピックキャンペーンなどの大きな目標を越えて、ある意味「燃え尽き症候群」
のような状態の選手達には、ぜひマッチレースを初体験して欲しいと思います。
彼らは不思議なほどに口を揃えて同じ事を言います。「こんなに楽しいヨットって、あるんですね」

この声を聞くと、我々はホントに「あぁ、練習しに来てくれて良かったなぁ」と感じます。
大好きなヨットの楽しさを思い出してもらって、また新たな目標に向かって進んでくれたなら、
これほど嬉しいことはないと思うのです。
 
 
さて、最後に、前回「想像つきますか?」って質問していた、「泥の船に葉っぱのセイル」の
もう1つの意味について書いておきましょう。
「泥の船に葉っぱのセイル」は、遅い船、鈍重な艇種、を表現しています。
「マッチレースとしての練習は、遅い鈍重な艇でなくてはイカンのだ!」と言っているのです。

最近の大会は、メディア受けするように、スマートな速い艇種が採用されることが
主流となっているのですが、その分、スピード勝負で決着が付くケースが増えてしまいます。
(もちろん、マッチレースでもスピードこそが最重要であります。)
しかしマッチレースとしての練習では、ゲームの要素、ルール、駈け引きを身に付けるための
練習をしなければならないので、そのためには、スピード勝負になりにくい艇種が相応しいのです。

だから古くなったJ/24は、最高!
よくマリーナの隅の方で見かける、何年も使われていないようなY-15なんて、初めてのマッチの
練習には最高だろうなぁと、いつも思っているのですが有効活用できると素晴らしいなぁ。。。
 
 
 

 
 
 
 
 

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